八王子の景色   武田松姫さま東下之像          [戻る]


武田松姫さま東下之像」と題されたブロンズ像。
信松院の門前に建つ像は、東を向いて歩いている。
顔を少し上げて遠くを見る姿は、これから越えようとする峠を
仰ぐのか、あるいは案下の金照庵がようやく見えたところか。

天正10年、武田家の命運が尽きようとする時に、
幼い姫達を連れて塩山から山道を越えて北条領を目指し、
ようやく恩方の金昇庵に辿りついたという。
初めて分け入る山道は、1人で歩くことさえ不安だったろうに、
幼い姫数人を連れての山越えは、どれほどの困難だったか。

幼くしての織田信忠との婚約は三方原の戦いにより、
武田、織田家が敵対することとなったため破棄となったが、
松姫は信忠を想い続け、生涯独身を通した。
戦国時代という争乱の世に、幼な心の愛を貫いた松姫。
その美しさは徳川家康の耳にも届いていたという。

松姫は、姉・見性院の意向を受けて、徳川秀忠の寵愛を受け
懐妊したお静の方を密かに匿ったという。
秀忠の正室・お江与の方(浅井長政の三女・江)が嫉妬深い
ために、その母子の命を守ったことが、お静の方が書いた
氷川神社の願文に残されている。