八王子の景色   鑓水道標                   [戻る]


八王子から横浜へと生糸を運んだ道は橋本義夫氏等により、
『絹の道』と命名された。
絹の道の最高地点・大塚山から鑓水へと道は下っていくが、
山道を下りきった分岐点に1基の道標が立っている。
この道標には、『此方 鑓水停車場』という文字が見てとれる。


(東) 此方道了堂八王子
(北) 昭和三年十一月十日復興
(西) 此方 御 殿 山
(南) 御大典記念 此方 鑓水停車場


これは、建設工事着工をしたものの、工事が中断し、幻の鉄道
となった南津鉄道の駅名である。
南津鉄道は、玉南電鉄(現:京王電鉄)の関戸駅(現:聖蹟桜ヶ
丘駅)付近から分岐して川尻(現:相模原市緑区)までを結ぶ
鉄道として計画されていた。
鑓水の希望であったこの鉄道は、昭和恐慌により工事が中断、
その後計画も白紙に戻された。

輸出用生糸の仲買で空前の繁栄を見せた鑓水であったが、
生糸の暴落などにより衰退の一途をたどり、新た希望となった
鉄道敷設も幻となってしまう。
道標は幻となってしまった鉄道をわずかに伝えている。
(参考:サトウマコト『幻の相武電車と南津電車』)