庚申塔(松竹稲荷神社) [戻る]
下恩方町・松竹稲荷神社境内の庚申塔は面白い。
笠付の石塔には六臂の青面金剛像が陽刻されている。
上方手が日月を掲げる「バンザイ型」である。
中央手は合掌、下方手は弓と矢を持っている。
(参考:インターネットサイト『庚申塔物語』 石川博司氏)
足下の邪鬼は破損したものか、はっきりしない。
台石の側面左右に各一羽の二鶏があるのは珍しい。
そして、その台石の正面が実に興味深いものである。
「台石前面の左部分が欠けており猿は二匹が残っている。
右の猿はしゃがんで口を押えているが、左の猿が珍しい。
乳房があるので雌猿とわかるが、右手が陰部の前を押さえ、
左手が尻を押さえている。
川柳に「庚申はせざるをいれて四猿なり」という句があるが、
「せざる」であろう。せざるのついた庚申塔は他に類をみない。」
(多摩石仏の会『新多摩石仏散歩』より)
台石正面の二猿はユーモラスに描かれている。
左の猿の乳房や右の猿の目などがはっきりしているので、
活き活きとしているのであろう。
これが非常に珍しい「せざる」を表現したものである。
破損した左部には三猿が描かれていたと思われるが、
どのような姿をしていたのかがわからないのが残念である。
石塔右面には「明和九辰七月吉祥日」左面には「講中九人」
と刻まれている。