八王子の景色   下散田子育地蔵菩薩           [戻る]


散田町3丁目に数体の石仏が納められた立派な覆屋がある。
覆屋の中には、その由来が書かれている。(以下原文のまま)

下散田子育地蔵菩薩の由来
武州多摩郡散田村以来此の地に大小六体の地蔵菩薩が鎮座している。
是れは下散田子宝子育地蔵と呼ばれ永年里人に親しまれ信仰されてきた
ものである。此の内宝永元年四月吉日と刻まれてあり今から二百八十一年
前の事にて下散田念仏講によって建立されたものであり、念仏講はそれ以
前からあったものと言い伝えられているものである。 又山崎傳次郎所有の
立地蔵菩薩像は文政年間男子出産を祈願し屋敷内に安置してあったもの
を今から約百六十年前に納めたと言い伝えられたものである。 もう一つは
石川為吉の屋敷内にあった坐地蔵菩薩が納められて現在の六体である。
毎月四の付く日が縁日で昭和二十年の終戦までは月に一回各家庭廻り番
で念仏講を開いた。特に八月四日の地蔵菩薩の縁日は意味のあるもので
あった。 即ち妊娠している女性のいる家では地蔵菩薩に供えられた燃えさ
しの蝋燭を持って帰ったのである。此の蝋燭は陣痛が始まると火を灯し安産
を祈願する為に使われた。蝋燭が燃え終わる頃には地蔵菩薩のご利益に
より無事に出産が終わると言う伝えである。お産の時間が少しでも短く済む
ようにと蝋燭はなるべく短いものが選ばれた。又この地蔵菩薩を信仰する事
によって子宝に恵まれない人にも子供がさずかると言われていた。是れが
下散田子宝子育地蔵菩薩と呼ばれ篤く信仰されてきた由縁である。
   昭和六十年八月吉日     伝言継承者 伊藤 幸嗣
                              山崎 秀雄
                              山崎 熊司