お穴さま [戻る]
大和田坂の途中から細い路地を南に入る。
しばらく行くと、左側に続く崖線の先石の鳥居が見えてくる。
これが、甲斐武田家ゆかりの「お穴様」である。
お穴様
大正から昭和にかけて、八王子付近は、桑の都、織物の町として栄えたころ、
農家の小高い雑木林の中腹に小さな洞穴があり、桑の葉の貯蔵庫として使っ
ていた。しかし、この穴の付近に白い蛇が出て、不幸な出来事が続いた。
近所の西山さんは、霊感の働く人で、先祖代々の業を消滅させ、大正十三年
「妙法結社」を結成された。
「お穴さま」の騒ぎが起きたのは、昭和三年、現豊田街道の拡幅の際、丁度
妙法結社のまん前まで掘り進んできたところ、ぽっかり穴があき、中に人骨が
何体の発見され大騒ぎになった。
西山さんがその守護神のお告げとして、これらの遺骨は武田軍の落武者たち
がここまで逃げ延びてきたが遂に力尽きたものであると説明した。その後も家
族の人たちが正、五、九月の十八日に礼拝式を行いまもっている。
守護神は「妙観圓大善神」と「正真稲荷大善神」である。 (福島)
(とんとん健康散歩の会「とんとん健康散歩道」より)
鳥居の先には崖に空いた大きな穴があり、手前には「武田信玄家臣供養塚」
と刻まれた供養塔が建っている。
天穴の中には、武田家家紋の四割菱が描かれた賽銭箱が置かれている。
奥には祭壇があり、花などが供えられている。
その奥の格子が組まれた扉の中には位牌でもあるのか、よくわからない。
武田家滅亡は、戦国の世に大きな転機をもたらした。
松姫の悲話や大久保長安の活躍など、武田家遺臣と八王子の関わりも数
多く伝わっている。
この「お穴さま」もそのひとつである。