八王子の景色   天野坂(2)                         [戻る]


バリケードを避けて進むと急坂が始まる。
道の両側は土の壁になり、そこに竹や雑木が繁っていて、
日光が入らないこともあって、湿気が多いと感じる。

車両の進入ができるようにと、いつの頃かコンクリート舗装が
されている。
だが、これは往時の城道を大きく破壊してしまったようだ。

本来の道幅は1間(約1.8m)程度で、その両側は急角度の
土の壁となっていたので、堀底道ともいえる状態だった。
その上には城兵が3間槍(5m超)を振り回して、堀底道を
通る敵を攻撃する構造になっていたと思われる。

あるいは、堀底道の上には渡し櫓のような構造物があって、
頭上から矢を射かけたり、石や丸太を投げ落とすように
なっていたとも考えられる。

この急角度の坂は敵の動きを止める仕掛けであり、狭い道は
敵を一列縦隊にすることにより、ひとりひとりを確実に狙うため
の構造となっている。








上の写真では、坂道の先が左に曲がっているのがわかるが、
その先がどうなっているのかはわからない。

城内の道は、折り曲げることでその先を敵に見せない工夫が
されており、滝山城ではその構造が随所に見られる。

また、道を曲げることで、敵の側面や背面から攻撃すること
ができるようになる。
特にこの坂は非常に急な坂になっているため、坂を登る敵は
足が止ってしまうために、その効果はより高くなる。

道が曲がった先に見えるの神社の祠がある場所は、
この天野坂を見下す曲輪で、坂道を登りきるまでは、切れ目
なく攻撃がされるようになっている。














坂を左に曲がると、道はさらに角度を増して、今度は右に
大きく曲がっている。

間断ない攻撃と先が見えない急坂。
比較的緩やかな丘陵を、固い防御の城に造り変えるための
工夫が施されていて、この天野坂を見るだけでも滝山城が
名城といわれることが納得できる。