八王子の景色   如意輪観音像(猿墓)                  [戻る]


八王子城の中の曲輪の南に昔茶店があったという。
そこに置かれた2基の石造物のうち、如意輪観音像の方は、
猿墓とも呼ばれている。

元禄年中勢洲今泉の産にて児玉氏の族、出家してこの山上
に多年住居し鉄山無心と号しける者、神社幷に神像に至るま
で建立する処なりとぞ。この僧木食の行をなしければ、毎日
猿一匹来たり、山中より薯蕷を掘りて持ち来たり鉄山に与え
けるが、その後来たらず。僧怪しみて尋ぬるに、谷をへだて
山の尾に芋を掘らんとて岩を穿ちけるが、山上より石まろび
落ちて、これに打たれて死に至れば、鉄山は悲しみて、その
辺にありあう石を建て、しるしとなして、かの猿を埋めて、猿が
墓と号す。
(植田孟縉著 片山迪夫校訂『武蔵名勝図会』)

石像に刻まれた建立年や奉納者の名前は、風化や苔で読み
取るのが難しくい。