八王子の景色   八王子城跡(2)                       [戻る]



八王子城は外郭を含めると周囲14kmにも及ぶ縄張りを持つ大城郭である。
この大城郭を表現するのは難しいので、余湖氏の「八王子城鳥瞰図」をお借りしてみたい。
(上掲「八王子城鳥瞰図」はインターネットホームページ「余湖くんのお城のページ」より管理人様の了承を得て、転載させていただきました)

深沢山の山頂を本丸とする八王子城は、本丸の東に小宮曲輪、松木曲輪、中の曲輪(八王子神社がある)があり、西に無名曲輪を配置して山頂要害部を構成する。
無名曲輪の西には馬冷やしと呼ぶ大堀切がある。馬冷やしは以前は井戸があったらしく、また大天守方面への道や本丸中腹の水平道(馬廻り道)や大天守中腹の
水平道など数多くの城道が交錯している。
馬廻り道は馬冷やしや高丸などを結ぶ鉢巻状の道で崩落しかかっている部分もあるが、慎重に歩けば周回は可能である。
小宮曲輪から北に延びる尾根の最上部は高丸と呼ばれ、搦手道や心源院道、登城道、柵門台方面を監視・防御している。
高丸の下に置かれた柵門台は、搦手道と山王台との連絡道、そして金子丸からの道が併さる中腹の拠点である。
金子丸は近藤曲輪、山下曲輪などを見下ろす位置にあり、また北側の登城道も監視する。金子丸から山麓まで築かれた十数段の馬蹄段は見どころである。
中の曲輪下の中腹には山王台がある、山王台は柵門台と似た位置にあり、アシダ曲輪や御主殿方面の監視・防御にあたっている。
御主殿と要害部を結ぶのが殿の道と呼ばれる道で、御主殿から上がると4段に築かれた石垣が良好に残っている。

御主殿は八王子城の中心となる曲輪で、城主北条氏照の居所であり、政務を行う政庁でもある。大手道から御主殿に入る引橋と石垣・石段で造られた虎口は、信長
の安土城を見た家臣の報告を聞いた氏照が、八王子城築城に採り入れたものだと考えられている。
御主殿の東には谷を利用した堀(空堀とも水堀ともつかぬ「谷堀」とでもいうべきか)を隔てて、アシダ曲輪、山下曲輪、近藤曲輪といった曲輪群が御主殿を護る。

御主殿虎口から引橋を渡った大手道は、太鼓曲輪尾根の北裾を東へ向い、小堀切の先に大手門が設けられている。大手門から城山川に向かって土塁跡が残る。
太鼓曲輪尾根は数条の大堀切と竪堀で尾根を断ち切り、その間に曲輪を設けている。この太鼓曲輪と御主殿の関係は、滝山城の本丸と小宮曲輪との関係と似てい
ると指摘する研究者もいる。

この他にも大手道の入口方面の遺構群、悲劇が伝わる御主殿の滝、井戸曲輪、水路城敷石遺構、大天守(詰の城)と石積み遺構群、棚沢の滝、青龍の滝、搦手口
の遺構、心源院の遺構、八王子城外郭とされる富士見台や熊笹山など数えあげたらキリがないほど八王子城の見どころは多い。