おちゃやの松 [戻る]
日野方面から滝山方面へ向かう東光寺道(古甲州道)が八王子市に入ると、
南に大きくカーブする。
大きく曲がった道筋の中央辺りに、3本の小さな松の木が立っている。
おちゃやの松
二十メートルにも及ぶ枝に雪を飾った姿が、最も美しいといわれているおちゃや
の松。樹齢およそ二百六十年のこの雄松は、小宮町、都道百六十九号線道路
わき、日野市との地境にある。
昔の国府道と鎌倉道路との交差点近くにあるこの松は、旅ゆく人が落ち合う道
標になったといい伝えられ、別名”落合の松”と呼ばれているのもこんな理由か
らだろうと思われる。
市の天然記念物に指定されているおちゃやの松の”履歴”は、いまださだかで
ないが、名前のいわれは、落合の松がにごったという説と、お百姓がこの木の
下で、日よけをしながらお茶を飲んだからという二つの説が残されている。
この松も時代の波には勝てず、車の通行量がふえるに従って道まで伸びた根
がいたみ、十数年前から衰え始め、枝も今は多摩川よりだけになってしまった。
近くに住む町の歴史家、福島和助さんの話では、子供のころは人家もなく、き
つねが鳴くこの付近は、夜うす気味悪く誰一人近寄らなかったという。
今はここにも会社、工場が立ち並び、何気なしに通り、見逃してしまうおちゃや
の松である。
(八王子市「ふるさと八王子」より)
以前は、この辺りに枝の張りが20メートルもある松の木があったという。
今、この小さな松の木が立つ場所が、おちゃやの松があった場所だったのかは、
はっきりと判らないが、本で見る限りはこの付近に松があったと思われる。
おちゃやの松はなくなってしまったが、この小さな松の木をそのモニュメントと
して昔を偲ぶよすがとするか。