八王子の景色   小仏トンネルの排煙設備                                      [戻る]


裏高尾を抜ける旧甲州道中のバス停大下と小仏の間。
小仏峠に向かって歩くと、左に流れる用水の向こうは中央本線の線路
となっている。
中央本線は、ここから小仏峠の下の小仏トンネルに入り甲府方面へと
向かうのだが、このトンネルの入口に一風変わった建造物がある。

トンネルの入口の上にコンクリート製の柱が多数並び、その中央には、
コンクリートの大きな構造物が見える。
さらにその上に妙な形のコンクリートの構造物がいくつか並んでいる。

これらは小仏トンネルの排煙設備の跡である。
















東京都と神奈川県の都県境に位置する小仏トンネルは延長8350
フィート(2545m)で、中央線の八王子−甲府間では笹後トンネル
(4656m)に次いで長い。蒸気機関車の時代、勾配のある長大な隧道
では、隧道内に煤煙が充満して乗務員や乗客に苦痛を与えることが
多かった。そこで、列車の進入後、後方の隧道入口に幕を引いて列車
の後に真空状態をつくり、機関車から出る煙を後方に吸引するという
方法がとられたが、さらに送風機を併用する排煙装置が考案され、
1928(昭和3)年に東海道線東山隧道に設置された。翌1929(昭和
4)年に小仏隧道にも導入された。
当時の写真によれば、コンクリートの基礎構造物の上にかなり大きな
木造の建物がのっていたようであるが、現在はコンクリート部分を残
すのみである。

(山田俊明『多摩 幻の鉄道 廃線跡をゆく』のんぶる舎
 1999年)

私はSLに1度だけ乗ったことがある。
20年程前の旅行中に小郡−津和野間で、トンネルもあった。
真夏だったが、車内は冷房が利いていて、トンネル内も窓は閉めて
いたように記憶している。
だが、冷房の無い当時は、窓を開けていて機関車が出す煤煙が
車内に入ってしまうと、かなり厄介ものだったらしい。