八王子の景色   富士塚                                           [戻る]

富士森公園の浅間神社拝殿の裏に、円錐台形の小山がある。
これは、新八王子宿建設の頃に大久保長安が築いた富士塚
であると、武蔵名勝図会に記されている。

富士塚
御所水村の民家より南の方にて、小山の上にあり。塚の四辺、
広さ凡そ四反分程、除地にて、その中に塚あり。高さ二丈程。
廻り百八十歩程。塚上の広さ四間四方。石の小祠あり。この
塚は往古大久保石見守が築建して、浅間の社を勧請したる
由なり。小高き丘地の上に高さ二丈の塚を築きたれば、富嶽
を望む勝地なるが、近年は塚の四辺の杉その他雑木成木せし
ゆえ、いまは土人富士森と唱う。

(植田孟縉著 片山廸夫校訂『武蔵名勝図会』)













富士塚には階段で登ることができる。
階段を上ると、延享2年(1745)と記された小さな社が建っていて、
木花咲耶姫が祀られている。
この小社が浅間神社の本殿であり、その拝殿として、大正天皇の
大喪の際の仮殿を移築したものである。

神社の拝殿と本殿は、通常は内部でつながっているものなのだが、
浅間神社は本殿と拝殿が独立しているという形式になっている。















富士塚の上には稲荷社もある。
稲荷社の前には富士山の形をした石が置かれている。
富士山の方向を向いて遥拝する場所だったに違いない。

稲荷社と富士山の関係は判らないのだが、
稲荷社が建っているのは溶岩の上。
富士塚とは、本来は溶岩を用いて造るものだと聞く。