八王子の景色   雨乞井之址                                                   [戻る]


山田町の山田小学校のグラウンドに沿うように伸びる道路。
その道路の途中に、突然道幅が拡がる場所がある。
縁石で囲まれ、花が植え込まれた花壇になっていて、中央には、
細い桜の木が枝を広げて立っている。

桜の根元を見ると、
応永六年(一三九九)夏 雨乞井之址
  廣園寺開山 干天に雨を祈る

と書かれた札がある。

雨乞いの井
これは開山信州諏訪の池に七日参籠して神体を拝せんことを祈念
し給うに、大蛇池中より頭を出す。又、七日参籠して神体を全く拝さ
んことを祈願す。依って、首尾全く出現せり。これを描き、後に像を
刻み、旱魃すれば、この井にて雨乞いせられしと云。この竜像を先年
甲州塩山へ借して諏訪の池にて雨乞いせしに、俄かに黒雲起こりて、
その像をさらい行きしと言い伝う。いまは八大竜王を画きて雨乞いを
なすと云。

植田孟縉「武蔵名勝図会」(片山迪夫校訂 )慶友社より)








武蔵名勝図会に書かれた「開山」とは峻翁令山和尚のことで、
応永6年(1399)の夏、雨が降らず人々は困っていた。
6月1日朝8時に峻翁令山和尚が雨乞いの祈祷をされたところ、昼2時
頃、雷がとどろき大雨が降った。
それから後、広園寺門前の山田集落では、昭和時代の中頃まで雨乞い
の祈祷があり、その井戸の跡が山田小学校南側道路上に、ウワミズザ
クラ1本の古木として残っています。

(兜率山廣園寺護持会「峻翁令山和尚」より)

峻翁令山和尚が雨乞いの祈祷をされて、大雨が降った後、昭和の時代
まで500年以上も雨乞いの祈祷が続いいたという。
ここは、その祈祷をしていた井戸があった場所である。