八王子の景色   有喜堂本店                                                            [戻る]



有喜堂本店』と金文字で書かれた看板。
高尾山薬王院有喜寺の菓子御用達をの老舗菓子店は甲州街道に
面した昔ながらの風情が感じられる店構えをしている。

店に入ると、時代を遡ったような懐かしい雰囲気の中に、和菓子が
並んでいる。

記録文書類は発見されていないが、伝承では昭和二(一九二七)年
建造と伝える。伝統的間取り四つ間取り平面を踏襲した、店舗兼住居
となる店屋建築の典型的な例である。(中略)
初層の形態がかなり改変されているものの、母屋の主要部分はほと
んど変更されておらず、昭和初頭の店舗建築の姿をほぼそのまま
残す遺構である。
当時の建具がほぼそのまま残されており、その繊細な美しさは架構
の持つ民家特有の木太い力強さと好対照をなし、田舎地における
「瀟洒」のイメージをよく伝える。また上層は全般に数寄屋造を意識
したものであり、特に十畳間の座敷飾りは贅を尽くしたものではない
ものの質が高い。高尾山薬王院の御用達の菓子店らしい格式と、
庶民的な親しみやすさを同時に兼ね備えた遺構である。

(八王子市郷土資料館『八王子市伝統的建造物等文化財調査報
告書』)




高尾山口の風景を引き締めてくれる店舗は、周囲がビル化する中
にあって、貴重な存在になっている。
この店構えを長く残してもらいたいものである。