八王子の景色   三木家長屋門                                                              [戻る]



滝山街道に沿って神社や道標探の散策をした。
勝手神社からスタートして西へ進んだが、戸吹町の交差点に着いたときに、
「長屋門を見落としたか?」と思った。

滝山街道でよく目立つあの大きな長屋門を見落としてしまったとは、ここ最近
の疲れのせいではあるまいと大いに反省。

とりあえず長屋門を探しに引き返してみると、驚いたことにそこには工事中の
囲いがされていた。
長屋門の前を通ったが工事の囲いで気が付かずに通り過ぎてしまったのだ。

疲れやボケのせいではないとわかり、とりあえず安心したが、肝心の長屋門
が解体されているらしく、貴重な建物をまた失ってしまうことに残念な気持で
いっぱいになった。

この長屋門は、八王子市郷土資料館発行の「八王子市伝統的建造物等文化
財調査報告書」に掲載されている建物のひとつなのである。








三木家長屋門
伝承では安政元(一八五四)年頃の建造とされる。通り部の形式や材の状態
から見て建造はこの時期で妥当だが、その後、おそらく明治末〜大正期にか
けて、大幅な改変が加えられて現在の形態になったと考えられる遺構である。
平面は桁行九間、梁間二間半で、南北に三間の部屋を設ける。南面、入母
屋造瓦葺き、腕木を出して四周に付庇を巡らせる。土台および主要柱は栗、
冠木、梁などは欅、小屋は松を多用する。(中略)
遺構全体のプロポーションや、柱が長く周囲に付庇を巡らせる点など、前出
の原家長屋門に類似する特徴を持つ遺構だが、中央通り部をのぞいて改変
が激しく、十九世紀中期の長屋門としての建築的資料価値は低い。
しかし、西室および西側付属室に施された改変は、明治末〜大正期にかけて
の趣味人的な、非常に凝った意匠を凝らした当代風数寄屋建築の好例である。
この点における建築的資料価値は極めて高い。

(八王子市郷土資料館「八王子市伝統的建造物等文化財調査報告書」より)


貴重な伝統的建造物がまたひとつ失われていく。
歴史や文化を感じさせてくれたものが無くなってしまうのは、街が薄っぺらく
なっていくようで悲しい。